Ⅰ [会員情報]
Ⅱ 教育情報
Ⅲ 会員活動
學校訪問 日 時:平成29年7月24日(月) 午後3時~
参加者:豊田、毛利、奥村、石坂、髙間、全工協事務局より石井次長、事務局の職員研修として、水野、富田、総計8名で実施しました。
学校訪問「東京都立総合工科高等学校」 報告:豊田善敬
今回訪問した「東京都立総合工科高等学校」は、東京都立小石川工業高等学校と東京都立世田谷工業高等学校が発展的に統合し、「理工系大学への進学」を目指す工業高校として、平成18年4月に開校した全定併置校です。
平成29年7月24日(月)午後3時から約2時間、学校の概要を説明いただくとともに施設・設備等を見学させていただきました。夏休みということで、生徒は少数でしたが、野球部の生徒たちはグランドで暑さに負けず練習していました。また、実習室の一室では、ロボット技術研究部の生徒たちが、大会に向けたロボットの製作をしていました。見学中、生徒たちと会うと、その都度大きな声で挨拶をしてくれました。
東京都立総合工科高等学校は、進学はもちろんのことですが、企業への就職、国家資格を含む各種の資格や検定の取得、部活動も積極的に取り組んでいる工業高校です。今回、全日制課程を中心に報告させていただきます。
全日制課程の学科(類型)は、機械・自動車科(機械類型)、電気・情報デザイン科(情報デザイン系)、建築・都市工学科(都市工学類型)。学級編成は、18学級(1学年6学級)。生徒数は、587人(5月1日現在)です。
校舎正門 学校の概要説明
① はじめに
平成9年9月、都立高校長期構想懇談会で「都立高校改革推進計画」が策定されました。この計画は、多様で柔軟な高校教育の展開を目指し、特色ある学校づくりの推進、開かれた学校づくりの推進、都立高校の規模と配置の適正化の推進、教育諸条件等の整備の4つを改革の基本的な方向を柱としています。併せて、平成9年度から平成11年度までの「実施計画(第一次)」を策定し、平成11年10月には「第二次実施計画」が策定されたものです。
第二次実施計画は、第一次実施計画を引き継ぎ、平成12年度から平成14年度までの3年間に重点的に着手・実施すべき具体的な計画を示したもので、都立高校改革推進計画の基本方針から、特に大学進学、国際理解教育を重視し、アドバンストテクニカル構想におけるスペシャリスト型として、拠点校としての位置づけをもった工業高校が設置されることになりました。
② 発展的統合
新しい工業高校の母体校は、東京都立小石川工業高等学校と東京都立世田谷工業高等学校。基本構想では3学科7類系、進学重視、国際交流、2期制の導入などが決まっていました。
平成16年4月、東京都立世田谷工業高等学校内に世田谷地区工業高等学校(仮称)開設準備室(校長他3名)が設置されました。開設準備室では、基本構想に基づき、施設・設備、教育課程および教務、生活指導、進路指導などの分掌業務、校章、校歌、制服の制定について調査・検討が行われました。
このとき、母体校の特色を最大限生かすことと、基本構想の実現化の中で航空類系の設置が課題となりました。先ずは、航空整備士業界の動向調査のため、調布飛行場および国土交通省など関係各所を訪問しました。結果、航空整備士の法改正や業界のニーズ、指導教員の育成などを考慮すると、学科の存在意義が薄いと判断し、設置を断念することになりました。これにより3学科6類系の学校としての形が決定されました。
③ 東京都立小石川工業高等学校と東京都立世田谷工業高等学校
東京都立世田谷工業高校は、平成16年度に全日制課程が閉課程、平成20年度に定時制課程が閉課程され、その後閉校された。広い校地と校舎棟及び工場棟などを東京都立総合工科高等学校に引き継がれました。
東京都立小石川工業高校は、平成19年度に閉校となりましたが、校地などは、東京都立総合芸術高等学校に引継がれました。
④ 東京都立総合工科高等学校
1) 校章
東京都立総合工科高等学校の校章は、工業3学科6類型(機械類型、自動車類型、電気類型、情報デザイン類型、建築類型、都市工学類型)から形は六角形で表し、所在地の世田谷区成城という緑豊かな環境を深い緑で示しています。この緑は、「常磐の緑」という色で、古くから和歌にも詠まれているように緑色は永久に変わらないというイメージも持っています。
2) 校歌
校歌の作詞を担当したのは、浅井慎平氏。作曲は、山下洋輔氏である。浅井慎平氏は、写真家として活躍する傍ら、音楽活動に関わっています。また、TBS「サンデーモーニング」のコメンテーターとして出演するなど多彩な活動をしている方です。世田谷下北沢の事務所を中心に、学校所在地での活躍もあり作詞を快諾していただきました。作曲者の選出については、浅井氏がコンビを組むうえで、浅井氏が御存じの方がスムーズにいくのではないかということで浅井氏から紹介していただき、日本を代表するジャズピアニストとして活躍する山下洋輔氏に依頼し、決定しました。
作詞においては、自身の少年時代に植物などの化石を発見して「なんだこれは?」と感じ、化石の後ろにある何億年という時間があると理解、それを発見したという喜びを通して、興味・関心を持ったことから「不思議忘れず」というフレーズができたそうです。
作曲については、男子生徒が歌いやすいように音階に配慮していただきました。また、校歌完成時には、山下洋輔氏が完成テープを学校に持参され、校長室で披露されたそうです。
3) 制服
制服については、新しい学校にふさわしい制服となるよう、「Neo standard」をテーマとして、既存の制服にとらわれない、まったく新しいデザインによる制服としたそうです。男女ともに伝統と誠実性及び機能性をデザインコンセプトにして、基本デザイン作成を制服販売会社等に依頼、男女それぞれ約20点の応募作品があり、開設準備室の一室で行われたプレゼンテーションと、母体校となる東京都立世田谷工業高等学校の生徒・教職員対象のコンテスト投票も行い、その結果を参考に現行の制服基本デザインが決定されました。
基本デザインを制作したのは、デザイナーの松倉久美氏(日本航空、三越・伊勢丹百貨店、JTB、ティファニー等のユニフォームデザインを手がける)で、男子ではジャバラの位置や太さ、ファスナーの採用。女子ではセーラー服とブレザー服を合わせたタイプの作成とサクラ色にこだわった色合いのベストの作成など、オリジナリティを前面に出した制服を決定しました。
4) 教育目標
東京都立総合工科高等学校の教育目標は「創造 Create」「探求 Career」「協同 Cooperate」。
「創造 Create」
…実験・実習などの体験的学習を通じて、科学技術やものづくりの不思議さ、面白さを体感し、広い視野からの自然や社会とのつながりの中で考える力を育成する。
「探求 Career」
…個性を伸ばし、自己について探求し、自己の進路を切り拓くことのできる自己実現力を身に付けさせ、将来のスペシャリストを育成する。
「協同 Cooperate」
…心身健やかであり、特別活動やボランティア活動などの諸活動を通じて、規範意識をもち、他者と協調し、国際社会に貢献できる豊かな人間性を育成する。
5) 施設・設備
施設・設備については、東京都立世田谷工業高等学校の大変広い校地と体育館を残し、校舎棟及び工場棟は増改築を行いました。1号棟と呼ばれる建築・都市工学科の入る工場棟だけが新築されたとの事です。
工場内の設備には特に大型のものが多く、現東京都立教職員研修センターの前身であった東京都立工業技術教育センターから大型の機械設備などが多く移設され、現在、拠点校実習で活用しているとの事でした。また、新しい設備の導入にも積極的に行い、スペシャリスト育成に努めています。
3Dプリンタ実習装置 ロボドリル(数値制御工作機械)
6) 進路状況
東京都立総合工科高等学校は、スペシャリスト型の工業高校であることから、理工系大学進学に重点をおいた教育課程を設けて、大学進学を積極的に進めています。ここ数年、産業界の好況を受け就職希望者数が増え、大学進学率が微減しつつあるとの事でした。
〈進路実現を支える三つの特徴〉
・三ヶ年を見越した計画的な進路実現
・夏期講習会や基礎学習会などの学びの場を提供
・四年制大学や専門学校、一般企業などへの充実した推薦制度
ロボット技術研究部 進路状況(学校案内パンフレットより)
最後になりましたが、今回の学校訪問において校務多忙の中、対応していただいた全日制担当副校長の橋本良平先生、定時制担当副校長の大矢剛寛先生、報告書を作成する際、非常勤教員の清水昭弘先生から詳細な資料等の提供をいただいたことに感謝申し上げます。
今後も東京都立総合工科高等学校の特色ある教育が益々発揮されることを願っております。
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