叙 勲 瑞宝小綬章(平成30年秋)石田壽文様、瑞寶雙光章(平成30年秋)石塚 明様 

 訃 報  大平眞一郎様(平成31年3月3日)、森 昭二様(平成31年4月1日)

 

都立工業校長人事異動関係

校 長

勇退者  永年にわたり工業教育にご尽力され、ご苦労様でした。

      蔵前工  渡邉 隆       荒川工  山本 誠

転入者  中野工   橋本広明(神津島)        荒川工   前畑光男(中部支援センター支所統括)

       蔵前工   三神幸男(墨田工)        墨田工   杉浦文俊(休職より復帰)

       科学技術  早川信一(多摩工)       府中工     古川直浩(府中東)

昇 任  多摩工  剱持利治(六郷副校長)

 

都立工業校長OB会総会予定

   日 時   令和元年511日(土) 15時30分~、 私学会館(アルカデイア市ヶ谷)

 

会員投稿

「我が国に於けるものづくり教育の現状を憂いる」          毛利 昭

この度、「ネパールからの技術研修生招請」に関わる事業の可否を視察するため、これまでの学校支援とは別な目的でネパールに足を運びました。同行したのは株式会社ホンダカーズ三重と言う会社の社長と人事部役員で、私を含めた3人での弥次喜多道中でしたが、きっちりと成果は出してきました。 

 日本では数年前から自動車整備の成り手が少なくなり、メーカーや修理工場では人手不足に悲鳴を上げている状況に陥っているとの事です。一頃は自動車整備士の資格を取って自動車業界で働くのが一種のステータスでしたが、今や過去の栄光でしかなく、日本の若者は、油や埃にまみれる仕事は敬遠する様に成ってしまったとの事です。

 豊かさの反動と切り捨てるのは簡単ですが、ものづくりの原点が疎かになれば日本の国力も低下し、新しい発想すら出てこなくなるのではないかと心配しております。

  先の大戦で灰塵と化した国土を蘇らせ、世界に冠たる経済大国に育て上げたのは、日本人の勤勉さもあるが、泥や油にまみれても仕事を完遂する精神力があった為だと思っております。その精神力すら失い、反骨精神と起業への志すら失った若者の再起を願わずにはおられません。

 この様な気風の中で、企業サイドも人材発掘を海外に向けざるを得なくなり、この会社でも8年前からベトナムからの人材に着目し、日本で教育をし直し正規職員として採用する新たなシステムを作り上げてきました。ベトナム人に来日してもらい1年間は日本語学校に通わせ日本語検定3N以上を取得させ、残りの2年間は自動車の専門学校に通わせ、2級自動車整備士の資格を取得させた後に、正社員として雇用するというシステムです。外国人技術者養成に3年間を要している事になります。

 近隣在住の企業経営OBの方からホンダの紹介を経てのツアーと成ったわけですが、ネパール国唯一の国立大学トリビュバン大学の工学部自働車科や自動車の専門学校、日本語学校などを視察し、日本大使館にも足を運び「外国人技能実習制度」の現状などを伺い、今後の見通しを立てることは出来ました。

 ネパールの日本大使館特命全権大使は西郷正道氏と名乗りましたが、豪快な方で何でも西郷隆盛の末裔との事でした。

 その彼が「ネパールのGDP3割は出稼ぎ先からの仕送りである。日本に行って技術を習得するのは大いに結構であるが、その技術をもって帰国し、国内に産業を興さない限りこの国の発展はない」と言っておりました。この点では我々の考えとマッチする基本的な考え方でした。ホンダカーズ三重のコンセプトは「ネパールの若者を一人前の技術者と成るまで日本で育て、その技術をもって日本に留まるも良し母国に帰り起業するも良し」としており、「母国で起業するのであれば資金援助まで視野に入れた支援は惜しまない」と言うもので、聞いている私も嬉しくなるひと時でありました。

 しかし、これで万々歳では無い事はお気づきの通りです。最大で、しかも将来にわたって危惧されるのが日本人の技術者育成の欠如です。

 教育行政とりわけ文科省や都道府県教育庁などの「大学進学志向重視」の波に翻弄され、工業を含む専門高校の統廃合が進み、その数が激減してしまいました。その様な中で工業高校は独自色を打ち出し、その魅力をアピールし続けて来ましたが、今年の高校入試辺りから愕然とする様相が呈され始めております。現在東京都では、工業高校に総合学科や職業学科などを含めれば、公益社団法人全国工業高等学校長協会に加盟している高校は24校(平成30年度末)にのぼります。その内プロパーが校長を務めている学校は14校に過ぎず、その結束も昔ほどではなくなっております。

 平成30年度の都立高校入試は出願が26日、学力検査が223日そして合格発表が31日の日程で行われましたが、多くの学校で定員割れを起こす結果と成っております。日比谷高校も二次募集をすることになったなどと、マスコミは興味本位で報道しておりますが、惨憺たる結果になったのは工業高校です。二次募集を実施する工業高校は蔵前工、墨田工、中野工、杉並工、北豊島工、練馬工、総合工科高、六郷工科高、科学技術高に及び、募集生徒数の合計は142名にも達しております。これに対する応募者の数はわずか4名と言う体たらくで、来年度は欠員のまま始業される事になっております。

 さて、その原因ですが、皆さんはどの様にお考えでしょうか。「教育の無償化により私立に人が流れた」「少子化で絶対数が少ないのでやむを得ない」「進学にかじを切ってきた教育委員会の責任だ」「中学生の気質が変わった」などなど言い訳は有ると思います。しかし、定員割れを起こさなかった学校もあり、細かな言い訳は通用しません。それらの学校が「どの様な努力を積み重ねてきたのか」「入学してきた生徒をどの様に育てているのか」などを検証してみる必要があると思います。ある中学校の教員は「工業高校は直ぐに辞めさせてしまう。だったら辞めさせずに面倒を見る私立に目が向きますよ」と言っているとの事ですが如何でしょうか。

 縁が有って工業高校で教鞭をとった仲間として、この様な事実に座しているわけにはいきません。現職校長に対する支援は勿論、我々OBが出来る事を話し合いませんか。総会は511日土曜日1530分より、市ヶ谷のアルカイダ市ヶ谷です。お待ちしております。